開発編 コラム

Sunoの公式APIは「まだ存在しない」

  • 『アプリ開発者向けAIツール大全』Chapter 8(音声・音楽生成API)より
  • 2026年11月5日版

音楽生成AIといえば、前作でも紹介したSuno(スーノ)を思い浮かべる方が多いでしょう。「SunoをAPIでアプリに組み込みたい」と考えるのは自然な発想です。しかし、ご注意ください。執筆時点で、Sunoの公式APIは存在しません。

ネット上で「Suno API」を名乗るサービスはすべて非公式のもので、Sunoの規約に反している可能性が高く、ある日突然使えなくなるリスクや権利上のリスクを抱えています。

Suno自身は2026年7月3日に「APIパートナープログラム」の申し込み受付を開始しました。ただしこれは招待制で、選ばれた一部の企業と一緒に作っていく段階です。一般の開発者が自分で登録して使えるAPIは、2026年11月5日時点でもまだありません。なお2026年10月28日には、ClaudeやChatGPT、Claude CodeなどからSunoを使える「Suno MCP」のベータ版(先行利用の申し込み制)が発表されました。ただしこれは、あなた自身のSunoアカウントとクレジットで、チャットから曲を作るための仕組みです。あなたのアプリに組み込んで、ほかの人に使ってもらうためのAPIではありません。

なお2026年9月9日、Sunoは新世代のv6を発表しました。ワーナーミュージックなどからライセンスを受けた楽曲で学習したと説明されており、歌詞の一部だけを直す部分編集や、楽器の分離などができるようになっています。そして旧モデルはすべて廃止される予定です。ただしこれは一般向けAPIの話ではありませんので、「公式APIを待つ」という状況は変わっていません。

そしてもう1つ、無視できない動きがあります。2026年9月18日、ユニバーサルミュージックとソニーミュージックが、このv6をめぐってSunoを再び提訴しました。 6万件を超える録音物(60,202件)を無断で使ったという主張です。Suno側は9月22日に「事実の面でも法律の面でも根本的に誤っている」と反論しています。その声明の中でSunoは、v6の学習にはパートナーから許諾を得た楽曲に加えて、利用者が作った曲も使ったと初めて認めました。あなたがSunoで作った曲も、学習に使われうるということです。ライセンス提携を発表した後のモデルに対する2件目の訴訟であり、商用の作品にSunoの音源を使うなら、この係争の行方は気にしておいたほうがいいと申し上げておきます。

大手レコード会社との訴訟についても、正確にお伝えしておきます。和解に至ったのはワーナー・ミュージック1社のみで(2025年11月)、ユニバーサル・ミュージックとソニー・ミュージックとの裁判は現在も続いています。2026年8月27日には、両社が訴えの内容を追加した修正訴状を提出しました。

つまり「公式APIが出る土壌」は少しずつ整ってきていますが、権利をめぐる争いはまだ終わっていない、というのが実際のところです。

それまでは、音楽機能を組み込みたいなら上で紹介したEleven Musicなどの「権利関係がクリアな公式API」を選ぶのが安全です。

「非公式APIには手を出さない」。これはAI開発全般に通じる鉄則として覚えておいてください。