開発編 コラム
AIが作った資料の「新しい置き場所」
この章で紹介してきたのは、あなたのアプリを本番として動かし続けるためのサービスでした。実は2026年に入って、それとは別の、もっと軽い用途に特化した新しいジャンルが立ち上がっています。
きっかけは、AIエージェントの普及です。Claude CodeやCodexに作業を頼むと、レポート、グラフ、資料、試作画面といった「HTMLファイル」がどんどん出てきます。ところが、それを誰かに見せようとすると急に面倒になります。メールに添付しても相手の環境で崩れる。かといって、この章で紹介したサービスに載せるのは、たった1枚のページには大げさすぎる。
そこを埋めるのが、here.now(https://here.now/)のようなサービスです。AIエージェントがファイルを送りつけると、その場でURLが発行され、すぐにブラウザで開けるようになります。アカウント登録なしでも使えて(この場合は24時間で消えます)、無料アカウントを作れば消えずに残ります。パスワードをかけたり、独自ドメインを割り当てたりもできます。
作ったのは、Chain、Mint Fun、Byteといった会社を立ち上げて売却してきた米国の起業家、アダム・ラドウィン氏です。サービスの公開は2026年2月。似た発想のサービスが他にもいくつか登場しており、静かに競争が始まっています。
さて、ここからが大事な話です。本書はこのジャンルを、まだ星付きで推薦できる段階にはないと判断しました。
理由は本書の評価基準にあります。本書の星は「世間の評判」、つまり海外のレビューサイト、開発者コミュニティ、日本の技術ブログでの評価をもとに付けています。ところがhere.nowについては、その材料がほとんど存在しないのです。海外の開発者コミュニティでの言及はわずか数件、日本語の記事は個人ブログが1本、ZennやQiitaの記事はゼロ。悪い評判があるのではなく、評判そのものがまだ形成されていないのです。
もう1つ、あなたに知っておいてほしい注意点があります。公開したページは、URLを知っている人なら誰でも見られます。パスワードをかけない限り、検索エンジンに拾われる可能性もあります。お客様の名前が入った資料や、社外に出せない数字を、気軽にここへ置かないでください。 手軽さと引き換えに、その判断はあなた自身に委ねられています。
その上で、こう捉えてください。「AIが作った資料を、その場で人に見せるだけの置き場所」として使う分には、確かに便利です。試作品を上司に見せる、グラフを1枚だけ共有する、といった用途にはよく合います。一方で、あなたのビジネスの本体を載せる場所ではありません。そこはVercelやCloudflareの領分です。
新しいジャンルには、こういう「まだ評価が定まっていない時期」が必ずあります。だからこそ、飛びつくのではなく、用途を限って試す。本書がこの新分野についてお伝えできる、いちばん誠実なアドバイスです。